ステロイド外用剤の正しい使用方法
2017/08/14
ステロイド外用剤の使い方
ステロイド外用剤は、基本的にその皮膚の炎症の程度、患者の年齢、湿疹のでている部位など総合的にみて、医師がその症状に合わせたステロイド外用剤の強さ、塗る回数、量などを決定していきます。
ここではアトピー皮膚炎治療ガイドラインに基づいて、記載しようと思います。
ステロイド外用剤の塗る回数
急性増悪期(急激にアトピーの症状が悪くなること)には1日2回(朝・夕(入浴後))が原則となっています。炎症が治まってきたら、様子を見ながら一日1回に減らしていきます。この時に注意したいのは、よくなったからと言っていきなり中止する患者さまがいますが、これは結局症状が治まらないうちに中止するとまた炎症がでてしまうのでやめてください。徐々に減らしていくのがポイントです。
肌に起こっている皮膚炎の炎症を燃え盛る火に例えるとわかりやすいのですが、勢いのある火に少量の水をチョロチョロとかけても、決して消えることはありません。かといって中途半端に消火しても、くすぶってまた燃えだしてしまいます。これと同じことが、皮膚の炎症(火)とステロイド外用剤(水)なのです。しっかりと炎症をなくして再発させないように、治療していきましょう。
良くなったように見えても、軽い炎症が残っているのがアトピー性皮膚炎です。見た目だけではなく、皮膚の中までしっかりと炎症がおさまるまでくすりを塗ることが大切です。
症状が落ち着いて治まってきたら、今までは保湿剤のみでスキンケアを常時して皮膚炎の症状が出た時だけ、ステロイドやタクロリムスなどを使用して、治まれば、再び保湿剤のみを塗布するのが定番でした。
最近はプロアクティブ療法といって、皮膚炎が治まっていても、保湿剤はしっかりと毎日ぬりつつ、週に1~3回ステロイドやタクロリムスなどを使用することで長期に皮膚炎をコントロールすることが出来、湿疹が落ち着いた状態を保つことができることが報告されています。
見た目には肌の状態がいいように見えても、ステロイド剤を使うことに不安を覚えるとは思いますが、複数の論文で保湿剤のみの場合とステロイド剤の週数回の間欠的に併用する場合に比べても、副作用の発生率に差がないことが報告されていますので、しっかりと治療をつづけてください。
ステロイド外用剤の量
人差し指の先端から第一関節まで、チューブから出した量(0.5g)が大体大人の手のひらふたつ分の広さの面積を塗るのが基本となります。
ステロイド外用剤を怖がって、すこしの量しか塗らなかったりするとしっかりと炎症を抑えきれずに症状が良くならない場合があるのでしっかりと適切な量をぬりましょう。
剤形
アトピー性皮膚炎は皮膚の乾燥がベースとなる疾患なので、基本的には「軟膏」剤がしっかりと患部につき、皮膚を保護してくれるおすすめします。
「クリーム」剤は、塗りやすくべたつかないので、人気ですが場合によっては軟膏に比べて刺激感があります。
「ローション」剤は、頭などの部位に塗りやすく使用感もよいがこれも軟膏に比べると刺激感がある場合があります。どの剤形も、患部をしっかりとカバーするように塗るのがコツです。
使用部位によるステロイド剤の強さの使い分け
ステロイド剤の皮膚への吸収率は、おなじ体でも部位によってはまったく違います。体の皮膚の厚みはどの部分でも、一定の厚さではなく、顔は皮膚が薄く足の裏などは厚みがあるのは一目瞭然ですよね。皮膚の薄いところは吸収率も断然よくなるので、ステロイド剤の強さも弱くても十分に効果があります。毛穴の数の多さも吸収率に反映されます。目安としては、腕の吸収率を1とすると顔はその13倍、頭やわきは約3.5倍、外陰部は42倍にもなり、足底は10分の1くらいの吸収率になります。顔や外陰部など薬の吸収率がいい部位では、ステロイド外用剤のランクも弱いもので十分効果を発揮することができます。
その人の年齢や、症状、患部などを考慮して、医師が処方した外用剤を、ほかの家族につかったり、人にあげたりするのは絶対にやめましょう。
保湿剤との併用の場合は
保湿剤を塗ってから、ステロイド剤を塗る?それともステロイド剤が先?
皮膚科に行くとステロイド剤と保湿剤の併用の処方もよくあります。ステロイド保湿剤より先に塗るか、後に塗るかは医師によって指示が違います。
私は、炎症が強い場合はステロイド剤を先に塗るようにしたほうがよいと思います。先に保湿剤を塗ってしまうと皮膚の上に保湿剤のバリア効果ができてしまうので、ステロイド剤を保湿剤の後から塗るとステロイドの効果が薄れてしまうからです。症状が落ち着ているときは、先に保湿剤をぬってもいいのではないでしょうか。
その訳はステロイド剤を患部に塗った後に保湿剤を塗ると先に塗ったステロイド剤を患部以外の場所に塗り広げてしまう恐れがあるからです。自分の皮膚の状態に合わせて、臨機応変に使いましょう。