ステロイドではないアトピー治療外用剤 プロトピック軟膏(タクロリムス)
2017/09/09
アトピー治療の外用薬として使われる外用薬のひとつにプロトピック軟膏があります。
この薬はステロイド外用剤ではなく、ステロイドと異なる作用で、抗炎症作用があります。
体の過剰な免疫反応を抑える免疫抑制剤でもあり、その効果はアトピー性皮膚炎のかゆみや炎症を抑えることができます。
プロトピック軟膏の有効成分であるタクロリムスのすぐれた抗炎症作用は成人用ではストロングクラスのステロイド外用剤の同等、小児用ではミディアムからストロングのステロイド外用剤と同等程度であるとメーカーの資料に記載してあります。
また、ステロイド外用剤ではないので皮膚萎縮や毛細血管拡張といった副作用もありません。
有効成分の分子量の大きさが大きいので、患部にのみ薬が吸収され正常な皮膚部分に塗っても、薬が吸収されません。
アトピー性皮膚炎の全身(顔面・頸部、躯幹・四肢)の諸症状(皮疹、そう痒感)に効き目がありますが、使用法に注意が必要な塗り薬でもあります。
プロトピック軟膏使用量について
プロトピック軟膏は、成人用0.1%、小児用0.03%とあります。
成人用は16歳以上、小児用は2歳から15歳以下の方は使えます。
体に塗る場合はチューブから約1センチだして、およそ10センチ四方の大きさまで塗ることができます。
赤みのあるところに塗って、光にかざしてすこし光る程度まで塗れば適量とメーカーの指示があります。
顔に塗る場合は、体よりも薄めに塗ります。
米つぶ一つ分の量は5センチ四方のおおきさまで塗ることができます。
眼に周りは目に入らないように注意して塗ってください。
顔、体の共通して1回に塗ることができるプロトピック軟膏の最大量は
成人5g(チューブ1本分)です。
2歳~5歳(20kg未満)は最大1g
6歳~12歳(20kg以上30kg未満)2g
6歳~12歳(30kg以上40kg未満)3g
6歳~12歳(40kg以上50kg未満)4g
13歳以上(50kg以上)5g
塗る回数
1日1~2回医師の指示に従ってぬること。
1日2回塗布する場合はおよそ12時間間隔で塗布すること。
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使用できない人もあります
プロトピック軟膏が使えないケースがあります。
チェックしてみてください
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人(胎児への影響がある可能性)
潰瘍、明らかに局面を形成しているびらんのある人
(副作用の発現が高くなる可能性があるので、その患部の潰瘍、びらんを改善した場合は使用できる)
高度の腎障害、高度の高カリウム血症のある患者
魚鱗癬様紅皮症を呈する疾患(Netherton症候群等)の患者
2歳未満の小児
プロトピック軟膏の有効成分であるタクロリムスに対し過敏症の既往歴のある患者
PUVA療法等の紫外線療法を実施中の患者
プロトピック軟膏が使えない症状があります
炎症が強くじゅくじゅくした状態や、かき壊してしまっている状態
プロトピック軟膏を使うと、刺激を通常より強く感じてしまうことがありますので、この場合はまずステロイド外用剤で炎症を抑えてから使いましょう。
とびひや、ヘルペス、にきび、おでき、などの細菌・真菌感染症が起こっている状態
感染が起こっているところにはプロトピック軟膏は使えません。
この薬は免疫抑制剤ですので感染症の悪化を起こしてしまいます。
皮膚以外の粘膜部分や外陰部には使えません
プロトピック軟膏を使えるのは
赤みや湿疹があまり強くなく、触るとざらざらした皮膚状態、
または乾燥した状態です。
プロトピック軟膏の使用した直後の刺激感について
プロトピック軟膏を患部に塗った直後は、お約70~80%の患者様にほてりや、ヒリヒリ、かゆみなどの刺激感が出ることがあります。
刺激感は通常1週間程度使っているうちになくなることが多いですが続く場合は、主治医にご相談ください。
最初はまずせまい範囲で塗り始めて、だんだんと塗る範囲を広げていく方法がいいようです。
顔やひっかき傷がある部位に塗ると特に刺激を感じることがあります。
また、入浴時にも刺激感が強くなることがあります。
刺激感が強く出た時はステロイド外用剤を短期間(数日)使用して再びプロトピック軟膏をぬることもあります。
また、ヒルドイド(保湿剤)を患部に塗ってから、プロトピック軟膏を重ねて塗ると刺激感は軽減します。
ヒリヒリしているとき、患部を冷やすことも有効です。
上手にコントロールできるように、医師や薬剤師と相談しながら頑張って塗りましょう。
プロトピック軟膏でのリンパ腫や皮膚がんのリスクについて
免疫抑制剤であるプロトピック軟膏を使い続けているとリンパ腫や皮膚がんになりやすいと聞いたが大丈夫なのか?
そんな疑問をもつ患者様もおられます。
結論からいくとプロトピック軟膏を使ってない人との皮膚がんの自然発生率は、使ってない人の発生率を超えないとのデータが示されています。
その理由は、この薬は有効成分の分子の大きさが大きいために炎症のある患部でのみ吸収されるので、正常皮膚から吸収されないがために治療を続けていくうちに症状が治っていくので、結果、皮膚がんなどの副作用をもたらす高い血中濃度が維持されず、皮膚症状の改善に伴って血中濃度は低下するためと考えられる。
プロトピック軟膏を指示に従って正しく治療すれば、皮膚がんなどの副作用をもたらす高い血中濃度が続く可能性が低いということです。